日本屈指の「そば処」山形県。山形市、そばとお酒と、人情と。「第二公園 山長」

   

読者の皆さん、こんにちは!

3年前に初めて山形に来て、この地の歴史や文化、山形の蕎麦。

それにまつわる人々との出会いにより、良い影響を受け感謝しているライターです。

 

そば屋さんの組合では今までのレビューにあるように、本当に個性豊かで様々な方達と出会えます。

皆さんそれぞれ、本当に仕事に対して一生懸命で真面目なんです。

そりゃあ当然と言えば当然ですよね。

だって、お客様に喜んでもらって、「あ~、美味しかった」「また行きたいな」「お腹が空いたらあの店でしょ!」

そんな風にお客様にまた来ていただける。という繰り返しがなければ僕たちは生活できないですから。笑

なので、一生懸命、どうしたらお客様が喜んでくれるのかを常に考え、日々の行動がその想いに沿っていきます。

美味しいそばや料理はもちろん。掃除やしつらえ。接客など。皆それぞれ工夫をしたり、ライバル店に勉強しに行ったり。

そんな人達の集まりの中で、さらに個性が突出している人のお店(店主)の紹介です。

 

「君は、お客様に楽しさを提供してるか?」

ちょうど一年前。

「君と飲みたいから川越に行く!」という連絡が入りました。

「山形」から、わざわざ埼玉の川越に。自分と酒を飲むためにですよ?

(冗談なのか、本気なのか・・)最初は驚きと共に、そんな気持ちがあったのは正直なところ。

何故って、そば組合でお会いしても常に大御所の皆さんに囲まれているため、挨拶程度しか記憶がありません。

山形大会(組合の全国大会)の銀山温泉で、一緒に浸かった事が一番近かったぐらいです。

 

そんな大先輩が本当に来て、飲んだ次の日に東京のそば屋さんに向かう車中の会話でした。

「美味しい料理を出す事なんて、料理屋なんだから当たり前。当たり前の事をしていても皆と一緒だろ?」

(う~ん、なるほど・・確かにその通り。だけど楽しさを提供かぁ、また新しい宿題が増えたな・・)

仕事や組合、お互いのプライベートな話しで往路はあっという間に過ぎて行きます。

 

また、こんなアドバイスも胸に残っています。

「人生一回こっきり!やりたいと思った事をなんやかんや言い訳して、やらないで人生を終えてしまう。そんなつまらない漢(おとこ)になるな!」

「グサッ」と胸に刺さる言葉でした。

今までの自分はまさに、言い訳をしながらやりたい事を出来ずに何十年と生きてきた。という苦い思いと、実際にそれを体現して背中を見せてくれている人が言うこの言葉。

(山形から飲むためにわざわざ埼玉に来ることもそうですが、他のエピソードは後ほど)

少しずつでも思った事を実行していこう。と背中を押されます。

 

毎回、前口上が長いですが今回はさらに長くて読み飽きる人がいそうで心配です汗

まずはお店に参りましょう!

 

第二公園 山長

今回の山形県そば巡りの旅、最後のお店になります。

山形駅から徒歩約10分。ホテルキャッスルの裏、機関車がなぜか鎮座する公園を挟んだ場所にあります。

夜の部開店前に、三百坊の岡崎さんに伴って行きます。

座敷の上り口にはこのビックなタペストリー!

「五薫」という、山形の限られたお蕎麦屋さんでしか飲めないお酒です!

奥の棚には蕎麦屋らしからぬ高級洋酒が・・

(鍵かけておいたほうがいいですよ~笑)

こちらの店主、先ほどの楽しさの提供は、どうやらお酒に関わるご様子。

和洋問わず、美味しいお酒を飲んでもらい、店主のウンチクを交えながら食事を楽しんでもらう。

というのがこちらのお店の真骨頂なのです!

 

テーブルに置かれたメニューを拝見。

この時期(3月中旬)はこのような品揃え。

山形名物の板そばやゲソ天、冬季メニューの鍋焼きうどん。

もう少し春に近くなれば、朝採り山菜の天ぷらや寒ざらしそば。

夏は山形名物、樹氷ラーメン(蔵王の樹氷をモチーフにした冷やしラーメン)

秋は松茸をはじめとしたキノコの料理たち。

山形らしさが四季を通して感じられます。

そして「裏」メニューは鏡文字!!笑

 

いろいろ気になりますが、今回は飲み放題の店主気まぐれコースです。

まずは岡崎さんとビールで乾杯!

最初の一品は板わさ。

こちらのお店、わさびはすべて生わさびが提供されます。

生わさびだけで日本酒が飲めてしまう自分にはうってつけです笑

(これはビールが飲み終わったら日本酒に切り替えなくては・・)

などと考えていると。

他の予約のお客様が続々ご来店です。

 

「遅くなりました~!」

ん?その中に見た事がある人が・・

 

『そば大好き!音楽家のRさん』じゃないですか!!

この山形そば巡りの旅ブログ、5軒に総て登場してしまうとは・・

ここまで来たら山形そばの宣伝部長を任命してもいいのではないですか?笑

どうやら皆さん、常連様のご様子で別々に来たにも関わらず同じテーブルに着席しては乾杯。

わいわいと楽しそうです!!

 

いつもの自分なら同じテーブルに分け入ってしまうところですが・・帰りの新幹線があるので平常心を保ちます笑

料理が続々運ばれてきます。わさび漬けやきゃらぶき。お出汁の染み出る出汁巻卵、山椒を効かせた蕎麦屋の焼き鳥。(出汁巻卵撮り忘れ汗)お酒が進むおつまみばかりです笑

この焼き鳥美味しいですよ!!

香ばしい醤油の香りと、カリッと焼けた表面の中はふわり!そしてふんだんに効かせた山椒!

お酒大好きな店主が作るのだから酒に合わない訳がないですよね!

 

「俺はよ、人見知りで口下手だがら・・」

って矛盾しまくりな店主は、山川さん。

確かにそんな部分もあるのかな?と思いますが、それはお酒が入っていない時だけかもしれません。

後輩の皆さんにも毎回いじられている光景を目にします。

「まったく!また酔っぱらって!」とタメ語でツッコミを入れる後輩達を気にすることもなく、豪快に笑い飛ばし、楽しそうに会話をするのは毎度の事。見ているこちらも自然と楽しくなります笑

 

・・・そんな山川さんですが、川越に来てくれた時の会話に本音がぽろっと出てました。

「俺はこんな風だがら、周りに迷惑かけてばかりだげどよ。皆が助けてくれる。本当、感謝しかない」

 

真面目な顔で出た本音。

長い間、山形の蕎麦屋の集まりである「山形そば組合青年会」のリーダーを務め、若手を育ててきた人の言葉でした。

山形の皆さんがその想いを知っているかどうかはわかりませんが・・、

昨年12月。

山川さんは仕事が出来なくなる(そばが打てない)ほどの怪我をしました。

川越に来て、真面目な顔で仲間への感謝の想いを話した数か月後です。

完治まで長くなりそうな怪我で、長期休業になってしまうのかと思っていた退院後。

なんと。山形の青年会の皆さんが、日替わりでそばを打ちに来てくれたそうです!

山形県内はもとより、県外からも。近隣はもちろん愛知県や大阪からもです!

こんなそば屋さんって、日本全国探しても他には見つからないんじゃないでしょうか。

 

東日本大震災の献杯酒

大勢のお客様が揃うと、なにやら準備が始まりました。

皆さん、日本酒のお猪口を片手に待ち受けています。

 

山長さんに伺った日は3月15日。

その4日前の3月11日は忘れもしない、6年前のあの大地震が起きた日です。

その時の自分は今までにない地震の衝撃に驚き、テレビの向こう側で起きている出来事に呆然とするしか出来なく、余震に過剰に反応し、ただただ、どうか被害が少なく済むよう祈るばかりの日々でした。

4月頃、親しい人からの「僕達で出来る事をやりませんか?」という電話でようやく目が覚め、6月に埼玉のそば組合で炊き出しという小さな支援に漕ぎ付きました。

 

だけど、そんな形式ばった一回こっきりの支援ではなく、震災の翌週から毎週の定休日になると、実費で。一人でも。

被災地に駆け付けたのは山長の山川さんなのです。

 

美談とかではなく、本当に聞いた事、感じた事を僕は書き留めたいと思ってます。

その話しを聞いた時、本人は照れくさそうに笑っていましたが、僕はかなり胸に突き刺さった事を覚えています。

「本気で手を差し伸べるってこういう事なんだ。こういう行動が出来る人が本物なんだ」という衝撃でした。

こんな人だから、普段はからかったりする後輩も慕って止まない。

こんな人だからこそ、放つ言葉が重いです。

 

「やりたいことを思っただけで終わるような男になるなよ」という先ほどの言葉はここに着地点を迎えます。

お前が正しいと思ったやりたい事をやらなきゃだめだよ。という、背中を押す言葉でした。

 

そんないろんな事を思い出しながら飲むお酒は

「ゴールデンスランバ」

震災で被害を受けた宮城県と福島県、両酒蔵の店主が山形で出会い、造られた献杯酒です。

http://www.uekiya.net/news/7832.html

盃に注がれた「ゴールデンスランバ」を片手に、お客様皆で「献杯!」

そしてその酒を造られた六根浄のお酒も飲み放題です!

六根浄さんのブログにも炊き出しの時の話しが出ていました。

http://blog.rockonjo.com/?eid=290

この時の炊き出しはラーメンだったようです。

そういえば、「山長」さんの記事を書こうと一生懸命調べても、ラーメンの記事ばかり・・

ラーメン屋さんじゃないのに!と思いましたが、きっとこれも土地柄なんでしょうね。

蕎麦もラーメンも同等に扱われる山形に来たからこその「気づき」。

「次に来たら絶対ラーメン食べなくちゃ!」

と、思いながらも、きっと蕎麦を食べるであろう自分を想像してしまいます笑

「Rさん」提供の冷や丼ラーメンと担担麺の写真です。

期待させて申し訳ありませんが、

コースの締めは、やはりおそば!

美味しい日本酒と蕎麦屋ならではのおつまみを頂いてしまったら、おそば以外は考えられないですよね!

今日の産地、品種は「キタノマシュウ」

これがまた、いい蕎麦なんです!

「蕎麦は切れやすい」とよく言われますが、畳んだ時に切れやすい個所でも切れていない!

鈴木製粉所の所長さん、直々に製粉されるという材料には驚きました!

割合は外一といって、つなぎの小麦粉は一割しか入っていません。

それなのに、香りやのど越しの良さ。歯触りまでも、素材を活かしたおそばです。

仲間の皆さんは、このそばをどんな風に打ったんだろう・・

きっとそれぞれの個性を活かして、そしてお客様はいろんなそばを楽しんだことだろう、と想像して止みません。

実際に、音楽家のRさんは「毎回違う人が打つそばを食べられるなんて!」と目を輝かせていました。

 

楽しく。美味しく、平らげる頃には帰りの新幹線の時間がせまっています。

常連の皆さんのこれから盛り上がりそうな雰囲気を横目に、店主の山川さん、三百坊の岡崎さん。音楽家のRさんに見送られ、山長さんを後にします。

 

余韻を楽しみながら乗り込む新幹線。

今夜はきっとここからが山長さんの楽しさが発揮されるんだろうな、と想像しながら二日間の山形のそば屋巡りの旅を振り返ります。

仕事にも、プライベートにもプラスになった二日間。

そば組合に入っていなかったら出会う事がなかった人達。

全国大会に来ていなかったら、君と飲みたいから住んでる街まで行くよ!と、こんなご縁もなかった。

いろんな事が、連綿と。こんな風に繋がっていくんだろうな。と、そこで思い出したのが、

「運がいい人は足を運ぶ人なんです」

結構有名なメンタリストの言葉です。

 

そっか。

山川さんは思い立って、すぐに足を運ぶ人だもんな。

「やりたいと思った事をやらずに終わる男にはなるな!」

この言葉と出会うために導かれたんだと思いました。

 

そば屋さんのレビューから、だいぶ外れてしまっていますが僕が山形に来た理由は、たぶんここにあるのだろうと思わされた帰り道。

この記事が公開される頃には、きっと山長さんは樹氷ラーメンの注文でひっきりなしの頃ですね。

いつか食べに行かなくちゃ!

 

「第二公園 山長」

住所:山形市十日町4-3-8

電話番号:023-622-2963

定休:火曜

 

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山長さんの記事が書かれたブログ

http://touhi.blog.jp/archives/1027664702.html

 

この記事を書いた人

松本 英利そば御膳 むさしや  店長
埼玉県川越市の郊外で両親が創業した蕎麦屋を営んでいます。

料理人の気持ちのこもったお店や料理を探す、食べ歩きが大好きです。

ヒトサラのページ
http://hitosara.com/0002100566/

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