埼玉県の蕎麦屋さんが「深谷ねぎ」を推す理由とは?!

      2016/06/06

 

読者のみなさん、こんにちは!

このブログで何度も登場する「深谷ねぎ」。

 

「何故、そんなに深谷ねぎ推しなの?」、と思っている方も多いのではないかと思います。

 

  • 品質のいいねぎだから。
  • 埼玉県の特産品だから。
  • 美味しいから。

はもちろんなのですが。

実は・・それにはこんな理由があるのです。

何故、埼玉麺業組合で深谷ねぎを推しているのか?

7年前に遡ります。

 

とある会員が「籠原の黒豚の視察」という勉強会に参加した事がきっかけでした。

その人は鳩ケ谷で出前の蕎麦屋を営む近藤さん(鳩ケ谷 満留賀)といいます。

 

黒豚の視察を終え、「ちょっと時間があるし、深谷は葱が有名だから見て行こう」と立ち寄ったのが事の始まりです。

 

お会いした深谷ねぎの農家さんは始め、冷ややかだったそうです。

 

「きっと興味本位で冷やかし程度だろう」

と言うのは、後にお会いした時に聞いた感想です。

農家さんは無愛想ながらも、仕事の話しになると葱や農業に対する想いや憤りを隠せずにいました。

「本来の深谷ねぎとは」「後継者問題」「農協との関係」それにまつわるしがらみやシステム。・・

 

それを聞いた近藤さんに閃いたのは、「僕達蕎麦屋の組合で皆がこの葱を使えたらその問題が少しは解決できるんじゃないのか?!

「自分たち蕎麦屋は葱は通年使うし、そのしがらみを解決できれば三方良し(生産者・第二次産業である組合員・お客様)になるのでは!」

 

思い立ったら止まることの出来ない性格もあり(笑)、近藤さんは率直に頼んだそうです。

「組合で斉藤さんのねぎを使わせて頂けませんか?」

 

正直なところ、深谷ねぎの生産者である「斉藤さん」は、前述したとうり「また冷やかしか」、「どうせ長くは続かないだろう」と思っていたそうです。

しかし、猪突猛進な近藤さんは「諦める」という言葉を知りません。ついにイベント用に出した出荷をきっかけに埼玉県の蕎麦屋さん用の生産に至ります。

そんなスタートから、7年も経ちました。

 

満留賀 近藤さんにインタビューしました!

2012-11-13 12.41.06

ライター)

「この計画を始めた時の想いなどは覚えていますか?」

 

満留賀 近藤)

「斉藤さん(深谷ねぎの農家さん)が「自分の代で終わりだよ」と言うのを聞いて、それはもったいないと言うのが率直な気持ちです。

斉藤さんは農協出身ゆえに、農業に関して、農家さんに関してとても詳しいです。その知識が継承されないで無くなるのは本当にもったいない。

また、その知識が凝縮された深谷ねぎも後世に残って欲しいと思いました。

自分達、蕎麦屋は生産者が居なくては成り立たない仕事です。

若者の農家離れが加速する今、何か未来に向けて良い前例を作りたいと思いました」

 

ライター)

「確かに。一部の蕎麦屋さんでは蕎麦のみならず、自店で使う食材を生産されている方もいますが、ほとんどの蕎麦屋さんは営業することに一生懸命なので材料の生産にまで時間を持てないですね。お店で使う食材総てを自前でなんてとても無理です。その道のプロって絶対に必要なのは自分も感じます。

しばらくお手伝いに行けていなくて申し訳ありません、収集・配送など、どのようにしているのですか?」

 

満留賀 近藤)

「収穫期は毎年、11月~4月。

毎週日曜の仕事後に店を出て、月曜の朝に埼玉南部に配達します。

火曜日が定休日ですので、その日に埼玉中部、西部に配達しながらまた深谷に行き、夜には東京方面に配達です。」

 

ライター)

「埼玉の最南端(鳩ケ谷)から最北端(深谷)まで、だいぶ距離がありますが、収穫期はその繰り返しですか?」

 

満留賀 近藤)

「そうです。」

 

ライター)

「通常業務に、その上、別の仕事となると・・自分ではなかなかやろうとは思えない内容ですね汗」

 

満留賀 近藤)

「正直、辞めたいと思う時もありました。

ですが、全国的に不作の年に深谷ねぎが良い結果を出したり、また若手のねぎ農家さんが斉藤さんに教えを乞いに来たり。今では東京足立区の若い蕎麦屋さんの集まりにも手伝ってもらっています。」

 

ライター)

「現在、斉藤さんのねぎを使っている店舗はどのくらいですか?」

 

満留賀 近藤)

「埼玉県の組合員が20余店舗、東京で15店舗、組合員外が3店舗です。」

 

ライター)

「それは一人では回りきれませんね。足立区の皆さんの存在は有りがたいですね。

今後、いい配送方法が見つかれば農家さんも農協に頼らなくてもいいし、使う店舗数も増やせますね。

農家さん自体はそれで良いと近藤さんは思いますか?」

 

満留賀 近藤)

「この事業を始めて、斉藤さんの売り上げは30%アップしたそうです。

自分達蕎麦屋も、相場に左右されることなく収穫期間は一定の金額で仕入れをすることができるのは良い事だと思います。

自分達もそうですが、【自分たちが作ったものを売っておしまい】ではなく。

食べた人、使った人の感想や喜びが直接聞けるのは仕事に対するモチベーションに関わってくるはずです。」

 

ライター)

「30%ってすごいですね!農協の存在が心配になるぐらい・・

今後はその事業をどのように考えていますか?」

 

満留賀 近藤)

「埼玉県での全国研修会(※組合青年会の一大事業として各県持ち回りで研修会があります。平成25年が埼玉で開催)で「農家のこせがれネットワーク」(若手農家の団体)とのディスカッションをしました。

各テーブルに農家さん1名に7~8名の全国の蕎麦屋さんが、何をどう話したのか完全に把握はしていませんが色んなアイデアや企画が出たのは今後に向けていいきっかけになったのではと思います。

彼らを始め、今の若い農家さんは間違いなく将来の日本の食を支えていく人達です。昨今の飲食業界では、生産者さんと直接繋がる料理人の皆さんが多くなっています。

そのような人達と交流しながら新しい仕組みや成功例を作っていけたら、と考えています。」

 

 

 

正直なところ、近藤さんは伝えることが得意ではないので、その経緯や内容に詳しい方にも取材したものをまとめました。

ですが、この事業の間に配達中の事故で大けがをして長い期間、入院生活やリハビリが続いたにも関わらず、代役を担ってくれる方もいて継続しました。

リハビリ後に復帰され、今もその仕事を続けています。

 

そんな人が、今期より埼玉県麺業組合の青年会長に就任しました。

長年青年会の運営を担ってきましたが、今後、どんな事をするのか想像がつきません。笑

 

 

深谷ねぎ生産者の斉藤さんが、お会いした時によく言っていました。

「まさか、ここまで続くとはね。あのバイタリティはどこから来るのだろう。今は近藤さんに本当に感謝しているよ」と。

 

鳩ケ谷 満留賀(近藤さんのお店)の食べログのページ

http://tabelog.com/saitama/A1102/A110201/11010552/

 

深谷ねぎの斉藤さんのホームページ

http://www.h2.dion.ne.jp/~saito55/

この記事を書いた人

松本 英利そば御膳 むさしや  店長
埼玉県川越市の郊外で両親が創業した蕎麦屋を営んでいます。

料理人の気持ちのこもったお店や料理を探す、食べ歩きが大好きです。

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