「根菜類の王様?」「山のうなぎ?」滋養強壮に優れた「とろろ」を研究!

      2017/02/07

読者の皆さん、こんにちは!
皆さんは「とろろ」は好きですか?僕は大好きです!唐突ですいません。

蕎麦屋さんのとろろと言えば。
定番の冷たい「とろろそば」、暖かい「山かけそば」。
わさび芋やマグロやまかけ、磯部揚げなどのおつまみ。
オリジナル料理になると数えきれないほどありそうですが、とろろが「嫌い」という人に会わないのは僕だけでしょうか?

先日ふと、とろろを仕込みながらそんな考えが頭に浮かんだので調べてみたくなりました。

 

「とろろ」の原材料は山芋

山芋と一括りにされることが多いですが、大きく分けると「自然薯・ジネンジョ」「大薯・ダイジョ」「山芋・ヤマイモ」の種類に分けられるそうです。それらの総称として「ヤマノイモ」・「ヤマイモ」と呼ばれるそうで世界では六〇〇種類もあるそうですよ!驚きです。

■自然薯

日本原産の天然種で古くから食べられていたそうで、日本書紀にも記述があるようです。縄文時代から食べられているなんてすごいですね。サツマイモやジャガイモなどより歴史の古い自然薯は「山のうなぎ」と呼ばれるほど栄養価が高い山菜とされているそうです。現在市場に出ているものは栽培品で天然物はなかなか出回らないとのこと。

■大薯

東南アジアが原産。アフリカ・熱帯アジアなどで多く栽培されている。日本では沖縄や南九州の一部で栽培されていて市場やスーパーでは出回る事が少なく、増粘剤としてアイスクリームなどに使われるそうです。

■山芋

中国が原産。日本には江戸時代に伝来したといわれている。長芋・つくね芋・銀杏芋・丹波芋・加賀丸芋・伊勢芋など種類が多い。山芋の形によって種類が分けられ、また地方によっても呼び名が違うそうです。

埼玉のスーパーで見かけるのは「長芋」と「銀杏芋」が多いと思います。

「長芋」は長形種に分類され、水分が多く粘りが少ないため、細切りにして生食や酢の物、また大きめに切って焼いたり煮物にするなど食感を楽しむ料理に。

「つくね芋」は関西では大和芋と呼ばれたりするそうです。ゴツゴツした拳のような褐色の見た目。コシと粘りが強く「とろろ」はもちろん、和菓子の原材料や高級料亭の食材に使われます。丹波芋や伊勢芋もこの部類。
一度、親戚から加賀丸芋をいただいた事があります。コシがとても強いとろろでした。丸いのですりおろすのが難しかったですが、味も濃厚でしたよ。

「銀杏芋」は、今度は関東で大和芋と呼ばれているそうです。ややこしいですね汗
銀杏の葉に似ているから銀杏芋。ただし、棒状の物や形は様々なようです。この種類もコシと粘りが強く、すりおろして食べるのが一般的。「とろろ芋」と呼ばれたりもするそうです。

■むかご

長芋や自然薯の葉の付け根にできる芋の子供。5㎜~2㎝の球状で、むかごご飯・塩ゆで・素揚げ・バター炒めなどに。天ぷらでもとても美味しいですよ!ほくほくして独特な香りがあります。僕も市場で見かけると必ず買います。栄養価も親芋と変わらず高いそうです。

ヤマイモの生産地

やまいもの種類を統合しての生産・出荷量トップ3は、ダントツで北海道と青森県。次いで長野県。埼玉県は8位でトップの50分の1の生産量のようです。

・・・う~ん。自分が使うのは銀杏芋なのですが、千葉県産・埼玉県産しか見ないのは何故なんでしょう・・。

埼玉県深谷市は一大生産地と聞いていたのですが。流通や取引先の関係もあるのかも知れませんね。

 

ヤマイモの栄養価・効能

実は・・・ここが一番重要です!

(※品種によって多少栄養価は異なるようですが、含まれている成分はそれほど変わりはないそうです)

では、ヤマイモに含まれている成分(栄養素)を挙げていきます!

マンナン・カリウム・ビタミンB1、2・ビタミンC・カルシウム・パテントン酸・コリン・サポニン・アミラーゼ・ジアスターゼ・グルコシターゼ・ジオスコラン・ジオスニゲン・ムチン・ミネラル類・アミノ酸20種類弱・まだありますが・・

有名な栄養素はともかく、「聞いたことないよ!」という栄養素の効能が凄いのです!

 

唯一「生で食べられる」

でんぷん質が多い芋類は生で食べるとお腹を壊してしまいますが、ヤマイモはでんぷんを分解する消化酵素の「アミラーゼ(ジアスターゼなど)」が多く含まれているため唯一生食ができます。

その消化酵素の量は大根の3倍!消化分解して、さらには栄養の吸収を助け新陳代謝と血行促進を促す栄養分です。

 

「生活習慣病」の予防に

動脈硬化の予防になるレシチンを作る「コリン」。

コリン自体が血管を拡張して高血圧に効果があるそうです。サポニンも脂質を溶かし抗酸化作用があり動脈硬化の予防作用ありです。

またコリンは脳神経にも作用し、認知症予防にも良いそうです。

ジオスニゲンも認知症予防に効果があるという研究結果が出たそうです。

 

粘膜を保護して「アンチエイジング」

ヤマイモ独特、ねばねばの正体は「ムチン」という成分。これがとても凄い成分なのです!

涙に含まれる成分で、ドライアイなど目に良い。

鼻や口、胃などの粘膜にも含まれウイルスの侵入を防ぐ抗ウイルス作用、胃の粘膜を保護して環境を整え免疫力を高めます。さらには肝機能、腎機能まで助けると!血糖値を抑え糖尿病にも良いそうです。

ヒアルロン酸と同様の効果があるという記事も見ました。

細胞を活性化させる効果があり、新陳代謝促進・老化予防・肌荒れ・便秘改善・疲労回復・ダイエット・・

なんでもこいだな・・「ヤマイモ」って凄い!!

 

自分で書いていますが、毎日でも「とろろ」を食べたくなってしまいます笑

 

あの痒くなる原因は?

ヤマイモの皮の近くにシュウ酸カルシウムが存在します。針状の物質なので皮膚を刺激するそうです。

シュウ酸カルシウムは酸に弱いのでレモン汁や食酢で洗うと良いそうです。

 

注意点として一つだけ

アミラーゼやジアスターゼ、ムチンは熱に弱く加熱すると効果が失われます。焼いたり揚げたりした、もっちり食感のヤマイモも美味しいのですが、是非生で食べていただきたいと思います。

 

滋養強壮に薬や栄養ドリンク、サプリメントなどがたくさんある現在ですが、「とろろ」でだいぶ補えるんじゃないかと思った今回の研究でした。

納豆とろろ、おくらとろろ、マグロなどの鮮魚、海苔や卵を加えたら・・美味しいうえに健康になれそうです!

もちろん蕎麦も一緒に!

参考文献:「わかさの秘密」さんより。食品成分や健康成分に特化しているサイトですよ!
http://www.wakasanohimitsu.jp/

最後に美味しいとろろの仕込み方

ヤマイモの皮にも栄養分が含まれているので、気にしない方はそのまますりおろしていいと思うのですが、皮やヒゲが残っていると真っ白なとろろが出来ません。しかもヒゲの根が意外と深いです。(※個体によります)

長いものは5㎜ぐらいあります。

こんな感じです。

そのヒゲの生え際に、包丁の「あご」(一番手前の角張ったところ)を差し込んで、根に引っかけ包丁を返すと「ぷちっ」と根っこまで抜けます。

こんな感じ。

ヤマイモのヒゲを全部・・少し手間ですが慣れてくると蕎麦を茹でる片手間に出来るようになるはずです。

この方法、あの超有名店「すきやばし次郎」さんの特集をテレビで見たのですが、お弟子さんが同じように仕込んでいたのを見ました。そんな有名店の仕事と同じ考えを持ててとても嬉しく思っています。

ヒゲを抜き終わったヤマイモ

皮は可能な限り薄くむく。と修行先では包丁ですべてむいていましたが、ピーラーで平らな面を。凹凸が激しい場所は包丁で。手で持つ場所は皮を残しておくとすりやすいです。もちろん皮の部分まですれたら、また皮をむきます。

すり鉢ですった後は、すりこ木で全体が均一になるように当たります。

真っ白なとろろの完成です!

この記事を書いた人

松本 英利そば御膳 むさしや  店長
埼玉県川越市の郊外で両親が創業した蕎麦屋を営んでいます。

料理人の気持ちのこもったお店や料理を探す、食べ歩きが大好きです。

ヒトサラのページ
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