日本屈指の「そば処」山形県。米沢市。軍神「上杉謙信」が祀られる上杉神社近くの繁盛店 「菊太郎 新富」
読者の皆さん、こんにちは!
そば組合に参加しているおかげで、最近は様々な街に行く機会があり、その街の特色や、いろんな蕎麦屋さんを知る事ができるのが嬉しいライターです。
今回は山形県へ蕎麦屋さん巡りに来ました。前回の三百坊さん、竹ふくさんに続いて三軒目のお店です!
「米沢は蕎麦屋よりもラーメン屋の方が多いんですよ」
山形二日目の午前中から、案内をしていただくのは三百坊のご主人「岡崎さん」。
前日に引き続き、またしても山形の青年会の方にお世話になってしまいます。
山形市から車で一時間ほどの米沢市は山形県の最南端。
戦国時代、米沢城にて独眼竜・伊達政宗が生まれた地。後に上杉景勝が治め、その側近である智将直江兼続により米沢の街が作られたそうです。「軍神」とまで言われた上杉謙信公の神社があり、前田慶次も晩年を過ごし供養塔がある街です。
もう、これだけでお腹いっぱい、胸いっぱいになってしまうライターです笑
それなのに道中、岡崎さんの「山形トリビア」は尽きることなく楽しませてくれます。
「山形はミイラの日本一なんです!」
「えっ??どうゆう事?!」
(気になる方は、「即身仏」で検索してみてください)
「この山の中に一般の人に知られていない秘湯があるんですよ。普通の車じゃ行けないんです、何度か行きましたが毎回帰れないんじゃないかと思うぐらい」
「ブドウ畑もだいぶ増えてきて、全国に山形のワインが認知されてきました。若い人が関東から就農するぐらいですよ」
「この池は龍伝説が今でも伝わっているんです」などなど!
同行された奥様の楽しい合いの手や、お二人が同じ場所に行った時の話しで盛り上がり・・
途中の南陽市で日本三大熊野と言われる熊野神社に参拝したり、あっという間に米沢市に入ります!
冒頭で岡崎さんに聞いたとおり、街のあちこちにラーメン屋さんが見受けられます。
お昼時には少し早かったのですが、お客さん入ってますね~!
う~ん・・。「米沢ラーメン」とても気になります・・。
とりあえず。まだお昼ご飯には早いという事で上杉神社を散策。
米沢城跡地にある上杉神社は上杉謙信が祀られていて、米沢の人々の心の拠り所になっているそうです。
後利益にあやかろうと参拝した後日に、よくよく調べると・・景勝や兼続が祀られている松岬神社を見落としていたり、おもしろポイントの写真を撮り忘れていたことを知ります。涙
また米沢に行かなければならないですね!
その上杉神社から北に向かい、米沢東高校の交差点を西に行った、突き当りに目的の蕎麦屋さんがあります。車で5分もかかりません。
菊太郎新富
「え!?まさか、(車を)停められない?」
店の周囲が駐車場になっているのですが、満車のようでしばし路上待機です。
しばらくして一台出庫したのでホッと胸を撫で下ろします。
駐車場には雪を解かす「融雪装置」。地下水を利用しているそうです。雪国ならではの光景。
綺麗なお店は、エントランスから店内。ガラスなども隅々まで掃除が行き届いていて「美味しい蕎麦が間違いなく食べられる」という期待感が膨らみます。
「いらっしゃいませ!!」
店内に入ると、こちらも元気になるような、気持ちのいい挨拶で迎えられます。
普段、自分も迎える側ですが、実際にお客様の側になった時に多くの事に気付かされますよね。
「うちのスタッフにどう伝えよう・・」などと考えながら店内の写真を撮り忘れるという毎度のパターンです汗
ちなみに、エントランスには敬翁桜が活けてあったり、前田慶次が持つような(さすが米沢!というか、自身の花の慶次の影響です)巨大な「番傘」が頭上に飾られていたりしました!
いろんな用途で食事を楽しめるお店
オープンキッチンの厨房や高い天井、古民家調でありながら外の明かりがたくさん入るガラス張り。個室も多く、宴会用の席も。昔ながらの蕎麦屋ではなく現代のニーズにとても合ったお店だと感じます。
あちこちが綺麗なのと、見せる厨房。「最近建替えたのかな?」と思い、後に店主に伺ったところ建替えてから20年近く経っているということです。
「こまめに掃除や手入れをされているんだなぁ~」、「20年前にオープンキッチンにするなんてなんという先見性!」
自分が修行先を二店舗、三店舗目と回った時、最初に言われたのが「ここの掃除をしてみて。前の店舗のやり方でいいから」と、掃除の仕方をチェックされました。
どのように掃除するか、どれだけ綺麗にするかが料理人にとってとても重要な事なのかがわかる例だと思います。
また、現在では「普通」と思われているオープンキッチン。かつてひと昔し前の蕎麦屋さん(他の料理店も含みます)は、ほぼほぼ客席から厨房が覗けるお店はなかったかと思います。建物の構造や店主の考えなど、考慮する点はもちろんですが、少しずつ時代が変わり「どのように調理しているか」「厨房の雰囲気も料理の味付け」。
そんな様にお客様に安心して、わくわく楽しく食事をしてもらうために、過程も「魅(見)せる」料理店が増えてきた今では当たり前のようになっています。
自分もそのようなお店が好きなので、カウンターに座ると身を乗り出して仕事ぶりを覗きこんでしまいます笑(やりすぎは迷惑ですよね)
逆に、仕事をする側としては周りの目が気にならない方が楽だし、集中できる。
実際、自分自身もそば打ちを始めから終わりまで、腕を組みながら「じーっ」っと見つめられると変な汗をかいてしまいます汗
寿司屋さんや天ぷら屋さんの店主は見られながらも、ピシッといい仕事をされるな、といつも感じているライターです。
そんなオープンキッチンを20年前からなんて。その時の店主に会って、どのように考えていたのかお話しを聞きたかったほどです。
メニューには新しい「スタンダード」になりそうなものが!
ちょうど空いた個室に入り、メニューを拝見します。
「えっ!?かにの天ぷら?」
通常、蕎麦屋さんの天ぷらといえば「海老の天ぷら」
どこで読んだのか、大正だか明治だか、洋食ブームの先駆けで「海老」は大衆の「ご馳走」になったとか。そんな海老様を押しのけトップの座に君臨しています!
もちろん普通の天ぷら(海老天)のそばもあるのですが、もう自分の頭の中は「かに天」でいっぱいです!
僕は「かに天ざる」、岡崎さんは通常の「天ざる」、奥様は「温かいとりそば」に決定!
道中の山形名物「冷やしとりそば」の話題があったからではなく、雪が降る中で自分の趣味の神社巡りに付きあわせ、凍えさせてしまい申し訳ないです・・。
ふと目に留まった「揚げ玉レモン」なる一品。
何だろう!とても気になります!
店員さんに伺うと「基本のおつゆに揚げ玉とレモンを入れてあるだけですよ」と。
ただ「入れてあるだけ」と言われても、メニューに載せるにはそれなりの理由があるはず!
「それもお願いします!」
岡崎夫妻と「何故ゆえに、かに天なのか」を話し合っていると、おそばが到着!
しなやかに、そして角が立ったそばの上には上質そうな海苔。
ハサミで切ったものではなく、手でちぎったものでしょうか。香りが良さそうです。
サックリ揚がった天ぷらは、ナス・舞茸・フキノトウの裏に隠れた大きい「かに足」の天ぷら!
おそばのレビューを書くはずなのに、かに天から食べてしまうライターです笑
ふわりとしたかにの身がサクサクの衣に包まれて、「これはいい!」と、頷いてしまいます!
プリッとした食感の海老も「食べた感」があって良いのですが、かにの天ぷら。じんわりと優しく口の中で、衣と仄かに甘い身が混ざってゆく感じ・・新しいスタンダードになりそうな予感です。
おそばもいただきます。
そば汁はカツオ・宗田・鯖のブレンドで、おそばの香りを邪魔しないすっきりした汁です。
たっぷりおそばを浸してもおいしくいただけます!
手切り海苔の風味も良く合います。和出汁ってすばらしい・・。
あ!揚げ玉レモンも試さなくては、(写真撮り忘れて申し訳ありません)と、いただきます。
お汁に入っているレモンを絞り、おそばをちょいっと浸して・・
「こっ・・」
「これは新しいですよッ!!」食べた瞬間、目玉が飛び出るくらい目を見開く自分を振り返ってしまいます。
普通の汁で食べるおそばももちろん美味しいのですが、揚げ玉を入れる事により「コク」が加えられ(人の脳は、油分に反応します)、またサクサクしたアクセントもいわずもがな。レモンの爽やかな香りと酸味(リモネンの成分は食欲増進)がそば汁を一変させるのです!
二日酔いの自分の胃にも優しく、スルッと入っていきます。
これは夏場に食欲が落ちた時でも間違いなくうける!!!
そう思い地元に帰って、自分の店で試しました!
が・・
新富さんで食べたのと何か違う・・・
何かがぶつかり合ってるような感じで一体感が無いんです。
理由はおそらく、レモンに合うそば汁(醤油のタイプや出汁の配合)の違いなのかもしれない・・
「まあまあ」の出来ではあったのですが、今後研究が必要だという結果でした汗
お出汁とレモンの調和のとれた「揚げ玉レモン」
作り方は簡単な「揚げ玉レモン」ですが大事なのはバランス。その絶妙なバランスは芸術作品のような出会いでした!こちらも新しいスタンダードになりそうな匂いがプンプンします!食してみたい方は、是非米沢の菊太郎新富さんで食べてみてください(^^)
江戸時代から現代に甦る幻のそば
菊太郎新富さんでは、その時期に採れる良い蕎麦を厳選し、お客様に提供されています。
今回伺った時の蕎麦は北海道産「キタノマシュウ」。
また、他では山形県産「出羽かおり」
北海道産「キタ早生」
季節限定の山形県産「寒ざらし」
そしてこちらも季節限定、「幻の山形天保そば」!
三百坊の岡崎さんによれば、
「山形の蕎麦屋と製粉所が、有志の集まりで天保そばの保存会を作ったのです。(漫画になった)そばもんにも詳しく書いてありますよ」と。
天保?幻?
何がなんだかさっぱりわかりませんが、調べてみました。
関係先のページから引用させていただきます。
1998年のとある日、福島県の旧家の天井裏から「そばの実」がびっしり詰められた《俵》が発見された。
時は、江戸時代後期。冷害凶作にみまわれ餓死する者が続出した、世に言う天保の大飢饉の頃。同じ思いを子孫にはさせまいと、貯蔵食として天井裏にその《俵》を保管したのだという。そして、代々言い伝えられ、今日まで大切に保管されていた。まさに、ご先祖が残した宝物であった。
「そばの実」は長さ70cm、直径30cm位の小型の俵に詰められ、更に二重三重の俵で保護されており、それぞれ俵の隙間には木炭と炭の粉がびっしり詰められていた。それは、ネズミなどの食害から「そばの実」を守る為の知恵であった。
発見後、先祖が残した「そばの実」を何とか蘇らせたい。と、国や大学の公的機関に送り発芽試験を依頼。しかし「すべての種子で胚は発芽活性を喪失、成長能力はない。」との報告であった。
それでも、あきらめきれない熱意と、その「そばの実」約100グラムを運命的に引き継いだ「保存の会」のメンバーらがこの試みに挑戦したのである。専門の公的機関でも全く発芽する気配すら見せなかった天保そばを、見事に発芽させた。天保そばが山形の地で蘇ったのだ。
他品種と交配しないよう、日本海に浮かぶ飛島の畑で種子を採取、山形市内の畑で栽培した。収量は徐々に増加。
そして、十年間、試行錯誤を重ね、ついに、店頭販売できるまでの収量を確保するまでになった。
永久凍土に氷漬けになっているマンモスのDNAから、現代に甦らせよう!って話を思い出してしまうぐらい、あまりにもロマンが溢れていて、さらにそれを実現してしまうという驚くべき実話です!
現在。有志の蕎麦屋さんや製粉所にてその「幻の天保そば」が食べられるとのことですよ。
そしてこの記事を書いている5月31日。
山形では「天保そば保存会」の一員でもある鈴木製粉所にて、「幻の天保そばを食す会」が開催されている事をフェイスブック上で知りました。
またしても、「そば好き音楽家のRさん」による(今回は同席していないのにも関わらず)タイムリーな情報提供ありがとうございます!
天保そばの解禁日は、5月31日本日です!各会員の店舗で食べられますよ!!
ほとんどの店舗でも2~3週間で今年の収穫分が売り切れてしまうそうなので、召し上がりたい方はお急ぎください!
「岡崎さん、天保そばってどんな味なんですか?」
「一言で言えば『野生』ですね!」
試食会に参加した「Rさん」によれば、今年のものは昨年の物より甘みが増してるとのこと。
「う~ん・・解禁のタイミングに居ない自分は・・」
埼玉からはすぐには行けないのがジェラシーを増大させますね・・
是非食した方の感想をお待ちしております!
「揚げ玉レモン」もお忘れなく!
菊太郎新富
山形県米沢市城北1丁目8ー20
営業時間/11:15~15:00 17:00~20:00
定休日/木曜日
TEL. 0238-23-0666
天保そば保存会
天保そば保存会のページ
http://tenpousoba.com/index.html
この記事を書いた人
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埼玉県川越市の郊外で両親が創業した蕎麦屋を営んでいます。
料理人の気持ちのこもったお店や料理を探す、食べ歩きが大好きです。
ヒトサラのページ
http://hitosara.com/0002100566/
Facebookのページ
https://www.facebook.com/kawagoe.soba/?ref=bookmarks
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