第八回 全国麺業青年研修会・福島大会 「Thanks ありがとない!」

   

 

読者の皆さん、こんにちは!

先日の10月11日、福島県に行ってきました。

その目的は、全国の組合に参加している飲食業の若い経営者の集まり。

 

母体は「一般社団法人 日本麺類業団体連合会」、「全国麺類生活衛生同業組合連合会」の二つの組織があって、前者は農林水産省。後者は厚生労働省の関係省庁に分かれています。

ちょっとややこしいですね。

簡単に説明すると、事業内容が違うみたいです。

前者は「食材の安定・麺類の普及や啓蒙」

後者は「衛生水準の維持向上」を目的とした飲食業の経営振興ということ。

詳しくはこちら

http://www.nichimen.or.jp/kaiin/main.html

 

その組織の中から、「若い人の情熱を、さらに仕事に反映できるように」と、作られた会が

「全国麺業青年連合会」

発足は、昭和35年。

僕が産まれる前からあったのですね~。

このブログを書いていなければ、たぶん調べる事はなかったです汗

 

今から50年程も前からこんな活動があったのですね。

いつも組合の裏方で支えてくれる、事務局の田中さんに発足当時の記事も見せていただきました。

その中で初代会長に選出された野川康昌氏の挨拶で

「これからの商売は、ただ昔ながらの伝統を受け継ぐだけでなく、常に進歩しようとする意欲を持たなければなりません。時代に遅れるものは必ず敗残の姿をさらす時がくるものです。幸いにわれわれには未熟ではありますが若さと情熱があり、これを存分にかたむけて体当たりでゆけるのが青年の特権であろうと思います。今日、待望の全麺青連が結成されましたから、これらからは全国の青年が互いに手を取り合い諸先輩の教示を得て、若い情熱を持って曽於雨後の向上を図りたいと念願する次第です」

 

・・・正直、ちょっと驚きました。

なぜって、景気の良い頃のお話し。儲かってしょうがない!ってご時世です。

そんな時代に、これだけの危機感を抱きながら活動をされていたとは・・思ってもみなかったのです。

今現在であるならそれは当然のように、呑気に仕事をしていようものなら本当にその言葉通りになってしまいます。

 

修業時代の師匠の一人が(自分の修業時代はちょうどバブルがはじけた頃)、

「この仕事に安息は無い」と、言っていたことを思い出します。

常に危機感を持って仕事に臨み、どうしたらお客様にまた来てもらえるか、考え実行していく歩みを止めない。

それが商い(飽きない)という事。

初代青年会長も同じような想いを持っていたのだと知りました。

 

そんな想いから産まれた「青年会」は、とても有意義な場所だと自分も感じています。

どんな大きな企業や組織でも、後継者がいなければ無くなってしまう。

その大事な後継者や予備軍を、「自身が率先して考え、自立し、責任を負えるリーダーになるよう」に勉強し育てる事ができる場所なのではないかと考えています。

大きな枠で考えれば、業界全体の未来も担っているのかと思うんです。

 

相変わらず、前口上が長くて固っ苦しくて申し訳ありません笑

 

本題に参りましょう!

 

麺類組合青年会の全国大会

 

昭和35年から始まり、一年に一回。全国の会員に向けた集まりを、各都道府県が持ち回りで開催します。

平成21年度から全国大会から「全国研修会」に変わり、僕が初めて参加したのもその時からです。

「第一回研修会」は愛知県で開催されました。

「味噌煮込みうどん」がメジャーな愛知県として、全国には香川県の讃岐うどん、群馬県の水沢うどん。様々な「うどん」があるけれど、うどんで有名な各地はどんな製法なのか。実際に香川県などに足を運び、ビデオで撮影し、地元愛知県の製法と比較。また、有数のそば産地である福井県や山形県の手打ちそばの取材をし、製法の過程やインタビューを交え事細やかに会場で説明をする。

という内容の研修会でした。

(実際にその時はお酒が入っていた自分なので、国会議員の居眠りよろしく陳謝なのですが、後日その研修会のDVDが手元に!それを見て参考にし、自店の機械打ちだったうどんが手打ちに変わるのです!)

 

その第一回研修会の後、愛知から静岡、東京、北海道、埼玉、山形、石川、群馬。

(※東京は第40回全国大会として開催)

と各県を繋がって、今回の福島大会に至ります。

今回はどんな物を持ち帰って仕事に活かせるのか、ワクワクします!

 

第8回 全国麺業青年研修会 福島大会

 

あの、東日本大震災から6年が過ぎ、地震や津波、原発の話題も少なくなってきました。

忘れちゃいけない記憶ですよね。

数年前の全国常任委員会で、福島県の青年会長「手打ちそば よしなり」の店主、吉成さんが、

「平成29年の研修会は福島がやります!」

と、声を上げられました。

「震災以降、福島は多くの皆さんにご心配をいただいてきました。今の福島を実際に来て、見て、感じてもらえればと思います」

 

スローガンは

「Thanks ありがとない!」~6年7か月の感謝を込めて~

 

後日、吉成さんにお話しを伺ったところ、

「正直な話し、自分達も原発事故後は窓も開けられない。洗濯物さえ外に干せない。そんな苦い時間を過ごしてきたが、せっかくの研修会の空気を盛り下げるような事はしたくないので詳しくは話さなかったのです。福島青年会の想いはスローガンに込めました!」

6年7か月の間の、いろいろな想いがこもった研修会

福島の特産品である「桃」をイメージしたピンクのスタッフジャンバーと、「I LOVE FUKUSIMA」のピンバッチを左胸に、福島の青年会員が一丸となり準備をし全国の青年会員を迎えます。

また、ピンバッチは研修会参加者全員にも配られ、全員胸に付けて全国の青年会が一体になります!

とてもセンスの良い、気持ちのこもったピンバッチです!

 

今回の全国麺業青年研修会の内容は、ずばり!「手打ちそば」を見て・食べ・味わう!!

福島県も日本有数の蕎麦の産地。

会津地方のそばは有名ですよね。きっと福島の誰もが地元の蕎麦を食べた事があると思います。

「日本各地でそばが打たれていて、打ち方、食べ方もその土地によって異なるなら、会員全員が皆で食べ比べたり、その工程を見れたら面白いですよね」

という、福島県の皆さんが出した答えが今回の研修会の内容です。

 

(組合員にはそば屋以外の業種の会員もたくさんいます。例えば山形なら、そば屋以外にラーメン、洋食。大阪や愛知はうどんを専門にする店の方が多かったり。こちら福島でも寿司屋、中華、桃の農家さんまで会員だったりします。その理由は組合の名称が「○○県飲食店同業組合」だったり「○○県麺類食堂生活衛生共同組合」など、蕎麦屋ではなくても参加できる名称になっているのがわかりやすい理由かと思われます。埼玉は「そば組合」という名称なので、蕎麦をメインに扱っているお店がほとんどです。個人的にはうどんが根付いている埼玉なら、「麺類」とか「飲食業」という名称でそば屋さん以外の業界と一緒に、蕎麦に関わらず多岐にわたる飲食店の勉強ができたら楽しいだろうな~、と思っているこの頃です)

 

題して「手打ちそば研修会」

今回の研修会、打ち手の人数は時間の都合もあり、会員から3名の選出です。

 

トップバッターは大阪府、「そば処万両」の杉本拓朗氏!!

食の街、大阪で創業80年を超える老舗の四代目!

お店のページはこちら

https://r.gnavi.co.jp/kbxz900/

Facebookページも素敵な投稿があります!

https://www.facebook.com/%E3%81%9D%E3%81%B0%E5%87%A6-%E4%B8%87%E4%B8%A1-386535134808572/

200人近くの同業者の前で、仕事をするのは並大抵ではできません。

杉本さんの表情も真剣そのもの!

北海道、江丹別の新そばを使っての実演です。

その仕事の丁寧ぶりといったら・・

自分は気が付かなかったのですが、同じ埼玉から参加した大宮支部の組合長「長山」の原田さんが「一回の切りが40回って、完璧に決まってるよね!」とこっそり耳打ち。

そう言われて見ていると確かに!!

大型スクリーンに映されたそば切り。

「一人前づつ切り分けるので、私の打ち方は時間がかかるのです」と杉本さん。

「普段は26回で切っていますが、今回の実演では40回が自分の切りがブレない丁度良い回数なのでこの回数で挑みました」

打ち粉(そばの生地同士がくっつかないように使う粉)をまな板に敷く際も、うしろの席の東京「銀杏」の店主、田中さんが「まっちゃん、今の見たか?均等に敷くのにそうきたか!」もちろん、拝見させていただきました。

 

やはり皆さん同業者。工程のちょっとした細部を見逃しません。

目を輝かせて興味深々です。

 

杉本さんの丁寧な仕事で切りそろえたそばは、福島の青年会員に茹でられ参加者に配られていきます。

角が立った、きれいにそろったそばです!

 

美味しくいただいていると間髪入れずに次の方の実演が始まります。

 

二番手の打ち手は、福井県「蕎麦・天婦羅 やす竹」の北谷敏一氏!

日本有数の蕎麦の産地福井県で、福井の太打ちそばと、江戸の細打ちそばの両方が楽しめるお店。しかもどちらも十割蕎麦です!

僕も以前に伺った事があります。その時に出された福井県産の夏新そばの衝撃は今でも残っています。夏新そばとは思えない甘さや香りは多くの蕎麦好きの皆さんを魅了することでしょう。ブログの記事にいつか投稿します!

やす竹さんのHPはこちら!

http://yasutake.p2.weblife.me/index.html

 

今回の研修会に福井県産の蕎麦を使いたかったそうですが、諸事情があり北海道幌加内の新そばで「福井県の蕎麦打ち・一本打ち」を実演していただきます!

「一本打ち」とは、麺棒一本で蕎麦を打つ、福井県などの地方の家庭で打たれるという特殊な打ち方なのです!

 

北谷さんは、その一本打ちなどの手打ち教室の講師をしているそうで、実演もスムーズに進行します。麺棒を厚い生地に押し当て、カタカタとリズミカルに伸していきます。

伸すというより、押しつぶす感じです。

「越前そばは太い麺。こうやって伸すことにより、そばのモチモチ感を引き出し噛んで味わうそばを作るのです」、と北谷さん。

 

是非!この記事を読んでくださった皆さんに北谷さんの技を見て欲しい!

のですが・・写真もうまく撮れておらず・・

福島の青年会からのDVDを待ってアップしたいと思います。

片山虎之助さんというそば通の方の記事でも北谷さんの「一本打ち」が取り上げられていますよ!

http://www.nichimen.or.jp/koshi/79.html

てっきり、試食用のそばは通常の「せいろそば」スタイルで来るのかと思いきや。

福井県名物の「越前おろしそば」で登場です!

 

「太いかなと思ったけど、これは美味しい!勉強になりますね!」隣でそう呟くのは、今年9月に埼玉の青年会員になったばかりの春日部・朝日屋の時田さん。

持って帰られる「何か」を発見されたなら、連れてきた甲斐があるってもんです!

 

三番手の打ち手は、石川県「石臼挽き純手打ちそば 村田屋」の村田隆仁氏!

以前こちらのブログの記事にもご協力していただきました。

鰹節のリユースの記事です

http://saimen.or.jp/blog/2016/05/10/post-506/

村田さんのお店も片山虎之助さんが記事にされていますね!

http://www.nichimen.or.jp/koshi/66.html

実演で使う蕎麦粉は、茨木県の常陸秋そば。有名な金砂郷の隣町で生産されている蕎麦です。

実は、長年にわたり全国麺業青年連合会の役員を担ってきた大阪の先輩が8月の末に急逝されました。その方が自店の取引先の蕎麦を全国の仲間に「この蕎麦は良いから試してみなさい」と皆に教えてくれました。

村田さんは、その意を酌み、弔辞の意味合いも含めてこちらの蕎麦を選びました。

 

村田さんの手打ちは、見させていただくのは二度目になります。

石川県での研修会に前日入りした埼玉の仲間たちで、早朝日が昇る前から村田屋さんの手打ち場にお邪魔させていただきました。

流れるような作業の、あの手打ちをここでも。

 

と、ここでハプニング!!

なんと、カメラのバッテリー切れをしてしまう間抜けなライターです汗

 

打ち終わった村田さん、「思ったように打てなかった」と後悔・反省しきりまくりでしたが、試食をした人たちの声は「このそば美味いね!」って声がひっきりなしでしたよ。

きっと大阪の亡くなられた中嶋さんも「そうやろ!な?こな味も色も乗ってるそばはそうはないで!ほんならおまえ、なんぼでこうたるかい・・」

と、きっと喜んでいるはずです。

来年の大阪大会には、中嶋さんのお店に行く仲間がたくさんいらっしゃいますね。

 

3名の打ち手の実演を終えて、懇親会へと移ります。

 

美味しい料理とお酒を交え、都道府県の枠を超えて皆さんが楽しんでいます!

よくよく見ると、福島の地酒を揃えたブースや(飲み放題です♡♡♡)、そば屋以外の青年会員の餃子やトンカツ、デザートのブースが!

こんなおもてなしは皆が喜ぶこと間違いないですよ!

仲間が作る食べて欲しい物を、全国の仲間に食べて、飲んでもらう。

飲食業ならそれがまず第一になりますよね。

円盤餃子もトンカツも美味しかったです!!(車なのでお酒は飲めず、デザートはあっと言う間に売り切れでした涙)

アトラクションも皆を飽きさせません!

福島と言えば、あの有名な日本のハワイ!美人さん達のフラダンスのアトラクションや、青年会員自らのバンド演奏!

さらに我らの鈴木会長が、厚生労働大臣賞を受賞したというサプライズ(青年会からの受賞者は初めて!!)でますます懇親会も盛り上がります!

 

これまでに準備で忙しかった福島の青年会員の皆さんも、ようやく一息。という感じでリラックスした表情。そしてやり切った充実感と会員同士の絆が深まった笑顔を見て、やっぱりこの会はいいなあ。と耽ります。

研修会の企画、準備をされた福島の皆さん。手打ちの実演に選ばれた方々。

プライベートの時間を割いて、臨むのは本当に労力も精神的にも大変だったと思います。

でも、きっと。

その大変な時間を過ごした人にしか得られない「大きな何か」があるはずですよね。

手打ち実演のトップバッターの杉本さんが挨拶で

「最初はなんで自分が。と思っていたのですが、終わってみると緊張しながらも皆さんの前で打てて良かった。本当に一生モノの経験をした気がします。普段、自分の店では気付けない事を青年会では気付ける。

それが何よりの参加意義ですよね!」

青年会に参加して、研修会を運営した経験のある方々はかなりの確率で毎年参加されている気がします。

「何か」良い事があるんでしょうね!

 

来年の研修会は食の街「大阪」が舞台になります!個人的にはまだ未踏の地というのもあり、今から楽しみでしかたありません!

 

あ、そうそう。

余談ですが、研修会には前泊や当日泊をして全国の皆さんと一緒に、飲んだり観光したり交流を深める皆さんが多いです。

これがまた!くせになる良い行事です笑

研修会に行ってみようかな?と思った方は、ぜひぜひ一泊して楽しさ倍増の研修会にしていただければと思います!

 

では、来年の「全国麺業青年研修会・大阪大会」でお会いしましょう!

この記事を書いた人

松本 英利そば御膳 むさしや  店長
埼玉県川越市の郊外で両親が創業した蕎麦屋を営んでいます。

料理人の気持ちのこもったお店や料理を探す、食べ歩きが大好きです。

ヒトサラのページ
http://hitosara.com/0002100566/

Facebookのページ
https://www.facebook.com/kawagoe.soba/?ref=bookmarks

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